- ボヘミア奇想曲
- フリスカ
- この曲の聴かせ方
何曲かやりましたが、ここではボヘミア奇想曲に絞って話を進めます。
まずは練習録音をどうぞ。
4月18日オケ~ボヘミア奇想曲(205小節目、フリスカから)
・フリスカ
管のソロに導かれて、さわやかなフレーズが舞い込んできます。この曲中で最も雄大で、ロシア的な響きをもつのがフリスカの冒頭部です。233小節目からはaccel.すると共に、ギターのシンコペーションのリズムが曲に不安定な要素をもたらします。con motoに入ると、広い草原の中にいるような雄大な響きが全面に押し出されます。その後、Allegro→un poco piu mosso→con motoと繰り返すことで、平和な自然の中に、どこか熱さが現れます。ギターが掲示したシンコペーションが、オケ全体に派生し、con motoで激しく演奏されます。加熱したオケは、速さを増し(Allegro mosso)、piu vivoに入っていきます。
ひとまずは、このpiu vivoへの導入がフリスカの大きな要素です。ロシア的雄大なさわやかさに、少し粗いスパイスをふりかけるような感じですね。そして、とうとうボヘミア「奇想曲」の様相が露わになってきます。
piu vivo(277小節目)からは、特定のパートのみが主題を掲示する形式になっています。1拍目で全員が思い切りよく8分で勢いづけると、パートの旋律にそのテンションが引き継がれます。メロディー→シンコペーション→メロディー→シンコペーションの対比ですね。これにより、さらに曲想が転じていきます。
「15」からは変拍子が入ってきます。ちょっとふざけてるみたいですね。まさに奇想曲。ここでは1stのソリがそれまでの主題を奏で、その裏でギターが遊んでいます。その後、それまでに掲示された別の主題がオケによって変形されて演奏されます。これを、2回繰り返します。
Allegro scherzandoは、もっと遊びが激しくなります。ちなみに、scherzandoは「戯れるように、ふざけるように、冗談をいうように」といったような意味があります。フリスカの主題を1stのソリ、及び、クラリネットが奏でていきます。その裏で、ドラが息の長いメロディーを弾いていきます。ドラのメロディーは非常に泥臭い感じです。ちょっと滑稽な感じもします。ちなみに、そのメロディーはラッサン部の葬送の主題と酷似していますね。
「17」からも遊びがあります。ラッサン部でフルートのソロ、及びクラリネットの呼応に使われたモチーフが援用されています。「ヤンタンタン、ヤンタンタン」(と書いても分からない気がしますが・・;;)というフレーズはまさしくそうですね。ラッサンのときはあんなにも重苦しかったフレーズが、ここで使われると軽くふざけているように聴こえます。旋律っていうのは、弾き方によってこんなにも表情が変わってしまうんですね。この泥臭さを表現したいものです。ラッサン部のクラリネットは優雅に哀愁をこめて。それとの対比です。
338小節目のcon motoからいよいよ奇想曲パワー全開です。マンドリン1st+2ndによって16分のざわめきが奏でられ、ギターによって金管楽器の模倣が行われます。もやもやもやもやして、cresc.して、「20」で爆発します。
358小節目のAllegro Vivaceからは完全に崩壊に向かっています。低音パートは熱気を帯びて、コンスタントに4分に重みを加えます。鼓動です。
やがて、Agitatoに到達します。ちなみにAgitatoの意味は、
agitato
【p.p./agg.】1】
【s.m.】1】[音](演奏指示)アジタート 2】錯乱した病人
です。ラフマニノフはいい言葉を選んだと思います。ぴったりな表現ですね。Agitato。ドラ以下はもっとオケを煽りましょう。
あとは気の赴くままに勢いに乗って突き進んでください。制御するというより、結果的にまとまったくらいなほうがちょうどいいです。もっとはっちゃけていきましょう。
劇的な和音の後に、GP。和音、GP。和音、GP。そして、Grave突入です。ここでラフマニノフの鬱が襲ってきます。飲み込まれるか、飲み込まれないか・・。これを振り払うべく、Grave2小節目の最後のフェルマータは、渾身の力をこめてcresc.しましょう!大きく出せば出すほど、次に向かう和音の力が大きくなります。スネアはここが一番の腕の見せ所ですね。
あとはPrestissimoで駆け抜けるだけです。楽しくやっちゃってください。
・この曲の聴かせ方
やはり、まずは曲の全体像を早く理解すること。
録音ではフリスカしかありませんが、ラッサンと合わせて1つの曲です。また、この曲に関しては、冒頭でフリスカの主題を掲示する部分があります。(序奏部)
つまり、序奏→ラッサン→フリスカというのが大きな展開です。それぞれに用いられている主題は、フリスカで取り入れられ、発展していきます。お客さんはこの曲を初めて聴く方が多いでしょうから、音色の綺麗さや響きの新鮮さを見せること以上に、この曲の魅力を示すことが大事になると思います。だからこそ、各主題がどのように展開され、再び掲示されるのかということを明確にし、それを演奏で見せなければなりません。マンドリン演奏の初演だからこそ、作曲者の意図を踏まえるということが大事です。まずはどういう曲なのかを理解した上で、マンドリン特有の響きを作っていく必要があるのだと思います。
もう一つは、熱さを演出すること。
この曲において、フリスカの乱れ方は尋常ではないですね。ラッサンであれだけ暗いのに、10分後にあそこまではっちゃけている曲も珍しいような気がします。なぜこんなに落ち着かないような構成になっているのか。それを形式上で理解できたら、あとはどれだけ表現の幅を広げられるかということに焦点は移ります。オケ全体でどれだけAgitatoになれるか。
頭で曲の構成がわかったら、後は自由にやることです。そうすれば勝手に周りの音が聞こえるようになって、周りのテンションがわかるようになって、自分の演奏が繊細にコントロールできる気がします。自由にやろうと思うと、気持ちが自由にコントロールできるようになります。指揮も、自然と見えます。呼吸が合ってきます。後はみんなで大いに熱しあっていきましょう。そうすれば、いい演奏がみえてくるはずです。
さて、寝ます。